RAG構築の費用相場を調べると、記事によって金額の桁が違い、どれを信じればよいのか分かりにくい状態になっています。費用は規模区分と対象業務の数で決まり、業務を1つに絞ったPoC(お試し開発)なら数十万円台から始められます。まずは自社の対象業務がどの規模に当てはまるかを確かめることが、見積り比較の出発点になります。
RAG構築の費用は、規模区分と対象業務の数で決まる
RAG構築の費用は、PoC・中規模・大規模という規模区分によって桁が変わります。同じ区分名でも、対象業務の数によって金額が違います。上位に出てくる記事を見ても、この2つの要素が金額を左右しています。
たとえば同じ「小規模PoC」でも、50〜200万円とする記事(出典:ripla.co.jp)があります。300〜800万円とする記事(出典:note.com)や、100万〜500万円とする記事(出典:twostone-s.com)もあります。規模別の相場、見積の内訳、初期費用と別に発生する費用、小さく始める場合の進め方の順に確認します。
規模別のRAG構築費用の相場と、自社がどこに当てはまるか
規模区分ごとの費用目安は、PoCが数十万〜数百万円、中規模が数百万〜数千万円、大規模が数千万円以上に分かれます。自社がどこに当てはまるかは、対象業務の数と、本番でそのまま使うかどうかで決まります。従業員数では判断できません。
| 規模区分 | 費用目安(初期構築費) | 主な内容・特徴 | 向いているケース・企業規模 | 運用保守・月額費用の目安 | 別途発生しやすい費用 |
|---|---|---|---|---|---|
| PoC | 50〜200万円(ripla.co.jp)/300〜800万円(note.com)/100〜500万円(twostone-s.com) | 業務1つの検証、限定部門向けの試作 | 対象業務が1つ、まず動きを確かめたい企業 | ―(PoC段階では保守は未発生が多い) | データ整備費、API利用料 |
| 中規模 | 200〜800万円(ripla.co.jp)/800〜2,500万円(note.com)/1,500〜4,000万円(twostone-s.com) | 部門向けの本格運用、特定業務での常用 | 1部門でRAGを本番運用したい企業 | 初期開発費の5〜15%/月(note.com) | API連携費、データ整備費 |
| 大規模 | 800万円〜3,000万円(ripla.co.jp)/2,500万〜5,000万円以上(note.com) | 複数部門展開、複数システム連携、高度な権限制御 | 全社展開を見据える企業 | 初期開発費の20〜30%/年(neural-opt.com) | インフラ費、権限制御の追加開発 |
対象業務が1つだけなら、まずはPoCの行を見れば自社の相場感がつかめます。運用保守の見方は2通りあります。月額を初期開発費の**5〜15%とする見方(出典:note.com)と、年間で初期費の20〜30%**とする見方(出典:neural-opt.com)です。どちらの基準で見積書に書かれているかを、発注前に確認しておきましょう。
PoC・小規模(部門の一部業務)の費用目安
PoC・小規模の費用は上の表のとおり幅があり、対象が業務1つか限定部門かで金額が変わります。sophiate.co.jpはPoCを50万〜800万円、本番を300万〜3,000万円と、さらに広い幅で示しています。
この幅の違いは、対象業務が1つか部門全体かという定義の違いから生まれています。この区分の中のどこに入るかを決めるのは、従業員数ではなく対象業務の範囲です。
中規模(部門向け)・大規模(全社展開)の費用目安
中規模は部門単位、大規模は全社展開が対象で、複数システム連携や権限制御が加わるほど金額が上がります。部門向けの中規模システムは200〜800万円です(出典:ripla.co.jp)。本格的な業務運用を見据えると800万〜2,500万円になります(出典:note.com)。中規模業務適用プロジェクトは1,500万〜4,000万円という数字もあります(出典:twostone-s.com)。
全社展開の大規模システムは800万円〜3,000万円です(出典:ripla.co.jp)。複数部門展開や高度な権限制御を伴うと2,500万〜5,000万円以上になります(出典:note.com)。大規模側の金額を押し上げるのは、複数システム連携と権限制御です(出典:note.com)。自社が1業務だけを対象にするなら、この2区分はそもそも当てはまりません。
同じ「小規模」でも金額の桁が違うのはなぜか
上位各社の「小規模」の定義がそろっておらず、1業務の試作を指す記事と、限定部門への本番導入を指す記事が同じ語を使っています。そのため見積書を見比べる前に、金額よりも先に確認すべきことがあります。
確認するのは、対象業務がいくつあるか、そして本番で使うのか検証で終わるのかの2点です。自社の対象が業務1つだけなら、上位の規模区分のどの行にも当てはまらないことがあります。比べるべきは区分名ではなく、対象業務の数と成果物の使い道です。
RAG構築の見積もりの内訳と、初期費用とは別にかかる費用
初期構築費の中心は人件費で、担当するエンジニアの単価×工数で決まります。AIエンジニアやデータサイエンティストは月80万〜120万円が目安です(出典:neural-opt.com)。フリーランスは月60万〜100万円、中小規模の開発会社は月80万〜150万円、大手SIer・コンサルは月100万〜200万円以上です(出典:ripla.co.jp)。
見積書を読むときは、初期費用と毎月かかり続ける費用を分けて見る必要があります。初期費用だけを見て安いと判断すると、翌月以降の運用保守やAPI利用料を見落とします。
要件定義・データ整備・開発の初期費用
要件定義は初期費用全体の10%前後が目安で、データ整備が必要な場合はここに追加費用が乗ります。要件定義は全体の10%前後です(出典:note.com)。データ整備が必要な場合は追加で200万〜1,000万円かかります(出典:twostone-s.com)。紙の書類のOCR処理(画像から文字を読み取る処理)が含まれると、追加で50万〜200万円が発生します(出典:aquallc.jp)。
PDF・画像・音声などマルチモーダル(複数の形式を扱う)対応は費用が1.5〜3倍になります。オンプレミス(自社設備での構築)やプライベートクラウドはクラウドSaaS比で3〜5倍のコストになります(出典:aquallc.jp)。データがどんな形式で残っているかによって、初期費用の内訳は大きく変わります。
運用保守・インフラ・LLM API利用料の月額
運用保守・インフラ・API利用料は、初期構築費とは別の月額費用として見積書に並びます。運用保守は月額で初期開発費の5〜15%です(出典:note.com)。年間では初期費の20〜30%が目安で、開発費1,000万円なら年200万〜300万円になります(出典:neural-opt.com)。
インフラ費用は中規模社内利用で月20万〜50万円です(出典:neural-opt.com)。LLM(大規模言語モデル)APIはGPT-4oの場合、質問数によって月5万〜20万円以上です(出典:aquallc.jp)。ベクトルDB(文書を検索用に格納する仕組み)のPineconeは無料プランがあり、有料は**$0.096/100万リクエスト程度です(出典:ripla.co.jp)。運用は月10万〜80万円程度**に加えて従量課金が乗る構造です(出典:sophiate.co.jp)。
- 運用保守:初期開発費の5〜15%/月
- インフラ費:月20万〜50万円(中規模)
- LLM API利用料:月5万〜20万円以上
- ベクトルDB:無料枠あり、従量課金
見積書で「含まれるもの」と「別途費用」を見分ける確認項目
月額費用の内訳を5項目に分けて確認すると、含まれるものと別途費用の境目がはっきりします。確認する項目は次の5つです。
- 障害対応・監視
- 軽微改修
- 問い合わせ窓口
- モデル/検索の利用料
- インフラ費
この5項目が見積書の中で分かれて書かれているか(出典:sophiate.co.jp)、固定費と従量課金が分離して書かれているかを見ます(出典:sophiate.co.jp)。1本の「保守費」としてまとめられている見積りは、どこまでが定額でどこからが従量かを個別に質問して確認します。
従量課金の上限を見積前に自分で仮置きする
従量課金の上限は、質問数と回答の長さを仮に決めることで見積前でも試算できます。1日あたりの質問数、1回の回答の平均文字数、参照文書の長さ、同時利用を仮置きし、上限を決めます(出典:sophiate.co.jp)。
- SaaSのアカウント課金:Copilot、ChatGPT、Claude、Geminiなどの月額利用料
- 専用インスタンス型:月額固定費
- 内製・運用コスト:要件定義、評価、ガードレール、LLMOpsなど
これらは別の費目です(出典:nextech-week.jp)。自社の利用量・セキュリティ要件・運用体制を基準に、方式ごとのコストを同一条件で試算することが、見積り比較の土台になります(出典:nextech-week.jp)。
準委任と請負で総額が変わるため、契約形態をそろえて比べる
同じ要件でも、契約形態が準委任か請負かで総額が変わります。準委任で800万円程度の想定でも、請負にすると1,040万〜1,200万円程度になる例があります(出典:note.com)。
複数社の見積りを比べるときは、契約形態と対象業務の数をそろえないと金額を比較できません。要件・機能を具体的に説明し、途中での要件変更を避けることが、総額を抑える効き方になります(出典:note.com)。
費用を抑えて小さく始める方法と、PoCと本格導入の選び方
費用を抑えるには、対象範囲を絞り、要件を具体的に固め、途中で変更しないことが効きます。リリース時点の対象範囲を絞る、要件・機能を具体的に説明する、途中での要件変更を避ける、補助金を活用する。この4点が上位記事でも共通しています(出典:note.com、ripla.co.jp)。
進め方はPoCから本番運用まで段階的に進めるのが前提です(出典:aquallc.jp)。PoCの妥当性は、成果が数値で定義されているかどうかで判断します(出典:sophiate.co.jp)。
PoCで作ったものを作り直すかどうかで総額が変わる
PoCの成果物を本番でそのまま使えるかどうかは、上位記事のどこにも書かれていません。各社はPoC費用と本番費用を別々に提示していますが、両者の関係には触れていません。
作り直す前提なら、PoC費用と本番費用の両方を予算に入れる必要があります。発注前に「検証後もこのまま業務で使えるか」を確認しておくことが、実質の総額を左右します。
PoCに向いている業務と、向いていない業務
PoCに向くのは、繰り返し発生し、手順が説明でき、過去の記録が残っている業務です。当社がPoCに向くと考える業務の条件は次のとおりです。
- 毎日・毎週くり返し発生している
- 入力・照合・下書き・検索など手順が説明できる
- 過去の記録(見積書・注文書・対応履歴など)が残っている
- 最終確認は人が行い、AIはその手前を担当できる
過去の記録が残っているかどうかは、データ整備費が追加になるかの判断材料にもなります。記録が散在している場合は、社内データをRAGで使う準備の記事で、見積書・請求書・日報をどこまで整えればよいかを扱っています。
AI担当者がいない会社が発注前に確認する、期間・体制・データの扱い
期間は工程の区切りで確認し、社内側の作業は4つに絞られます。期間は要件定義、データ収集と前処理、開発、システム統合とテスト、運用と保守という流れで区切って確認します(出典:moji-inc.com)。
社内側が担う作業は、対象業務の説明、データの受け渡し、実データでの確認、最終確認の4つです。AI担当者がいなくても、この4つを誰が担当するかを事前に決めておけば進められます。データの扱いは、使用するデータ、利用サービス、アクセス権限、保存・削除方法を着手前に決めておく必要があります。
社内文書を外部のAIサービスへ渡すとき、先に決める項目
外部のAIサービスに社内文書を渡す前に、4項目を書面で確認しておくと、発注先を問わず比較できます。当社は着手前にNDA(秘密保持契約)を締結し、使用するデータ、利用サービス、アクセス権限、保存・削除方法を事前に確認しています。外部AIサービスへの情報送信も、合意した範囲でのみ実施します。
この4項目は発注先を問わず、見積り段階で書面に残せるかを確認できる項目です。社内データの整え方については社内データをRAGで使う準備の記事で扱っています。
貴社の課題をAIで1つずつ解決いたします。
1つの業務にしぼってAIエージェントを作るPoC開発を是非ご検討ください。開発・検証20万円〜。話がまとまっていなくても、お気軽に相談してください。
業務1つを対象に、20万円〜・10日で検証する進め方
当社のPoC開発は、業務1つを対象に開発・検証20万円〜、着手から10日で納品します。対象業務と開発範囲に応じて見積りが変わり、相談から提案までは無料です。
含まれるものは、業務のヒアリングと対象業務の選定、AIエージェントの開発、実データでの動作確認、検証結果と改善候補の報告、操作・情報更新の手順書です。別途費用になるのは、AIサービスの利用料(利用量に応じて発生)、既存システムとのAPI連携、検証後の保守・追加開発です。この境目は、この記事のここまでの内訳の考え方と同じです。
進め方は4段階です。STEP1は無料相談30分(開発内容は未定でも可)、STEP2は提案・見積もりとNDA締結、STEP3は開発・検証10日間です。内訳はDAY1〜2ヒアリング・データ受領、DAY3〜7開発、DAY8〜9実データで検証・調整、DAY10報告・納品です。STEP4は業務での利用開始で、検証後もそのまま業務で使えるため作り直しの費用は発生しません。課題が解決したかは、回答までの日数・確認の往復回数・担当者以外でも対応できた件数・入力の誤りの件数などで測ります。
規模別の費用相場はripla.co.jp、note.com、neural-opt.com、twostone-s.com、aquallc.jp、sophiate.co.jp、nextech-week.jp、moji-inc.comが公開している数値をもとにしています。自社の料金・進め方は株式会社AiPHAが公開しているPoC開発サービスの情報によります。
よくある質問
生成AIの構築費用はいくらですか?
規模区分によって幅があり、PoCは数十万〜数百万円、中規模は数百万〜数千万円、大規模は数千万円以上が目安です(出典:ripla.co.jp、note.com、neural-opt.com)。対象業務の数によっても金額は変わります。
RAGシステム構築とは?
社内文書を検索してAIに答えさせる仕組みを作ることです。チャットボットやFAQシステムなど導入形態によって、費用は100万円から数千万円まで変動します(出典:twostone-s.com)。
RAGの導入にはどのくらいの期間がかかりますか?
要件定義、データ収集と前処理、開発、システム統合とテスト、運用と保守という工程の区切りで確認します(出典:moji-inc.com)。当社のPoC開発は着手から10日で納品します。
クラウド利用とオンプレミス(社内設置)で費用は変わりますか?
変わります。オンプレミスやプライベートクラウドの構築は、クラウドSaaS比で3〜5倍のコストになります(出典:aquallc.jp)。
業者によって見積もりの桁が違います。どう判断すればよいですか?
対象業務の数、契約形態(準委任か請負か)、月額の内訳項目をそろえて比べます(出典:note.com、sophiate.co.jp)。区分名だけで比較しないことが判断のポイントです。
まとめ
- RAG構築費用は規模区分で桁が変わり、同じ「小規模」でも対象業務の数によって金額が違う
- 見積りでは初期構築費と、運用保守・インフラ・LLM API利用料を分けて確認する
- 契約形態(準委任・請負)と対象業務の数をそろえないと、複数社の見積りは比較できない
- 小さく始めるなら、対象業務を1つに絞り、検証後もそのまま使えるかを発注前に確認する
まずは対象にしたい業務を1つ書き出し、その業務に過去の記録が残っているかを確かめてください。無料相談30分は開発内容が未定でも利用でき、社内で提案するための材料集めとしても使えます。話を進める段になったら、フォームからご相談ください。
