取扱説明書を外国語へ訳す仕事では、自然な文章になっているだけでは確認が終わりません。部品名の統一、数値と単位、操作の順番、注意事項が原文と対応している必要があります。AIを試すなら、まず一つの製品・言語・章に絞り、翻訳の下書きと人による照合までを対象にします。
ここで扱うのは翻訳補助の検証です。製品の安全性や法令適合性を判定したり、重要な警告文を人の確認なしで確定したりする用途は含めません。
最初に対象の章と言語を決める
操作説明、仕様表、保守手順などでは、確認するポイントが異なります。原文の版、対象言語、利用者、公開先をそろえ、どの章を誰が確認できるかを決めます。翻訳が必要な量だけでなく、原文に曖昧な表現が残っていないかも確認します。
既存の翻訳支援ツールや翻訳メモリで十分な場合もあります。過去の訳文を再利用する方法とAIによる下書きを、修正を含めた作業時間で比較してください。
相談前に準備する資料
- 版が確定した原文と、対象の章・言語
- 製品名、部品名、禁止する訳語を含む用語集
- 承認済みの対訳と、表記・文体のルール
- 数値、単位、図表番号、参照先の確認項目
- 翻訳を確認する担当者と、技術内容を確認する担当者
機密情報や第三者の資料を含む場合は、共有可能な範囲を先に確認します。PDFを文字へ変換する段階で行や列が崩れることもあるため、入力用テキストと原本の対応も点検します。
用語集を入れるだけで完成とは考えない
用語集には、原語、採用する訳語、対象製品、使用例、更新日を記載します。同じ言葉でも製品や文脈で訳し分ける場合は、その条件を添えます。旧製品の用語を新製品へ一律に当てはめないことが大切です。
MicrosoftのCustom Translator公式資料では、原語と訳語を対応させた辞書や、フレーズ辞書の大文字・小文字を区別する一致条件が説明されています。これは製品固有の機能例です。対応する言語の組み合わせと制約を確認し、辞書を使えば文脈を含めて正しい翻訳になるとは判断しません。
PoCでは、用語集が適用された箇所だけでなく、適用すべきでない箇所も調べます。担当者が変更した訳語は、理由を残して次回の用語集へ反映するか判断します。
原文と訳文を同じ単位で照合する
確認画面には、段落や表の行ごとに原文と訳文を並べます。原文の版と位置が分かるようにし、翻訳対象から外した文字や読み取れなかった箇所を表示します。全文が流暢に見えても、一文が抜けていないかを追える構成が必要です。
仮例:仕様表の数値を確認する
以下は説明用の仮例です。仕様表に「最大24 V」「締付けトルク5 N·m」とある場合、数値だけでなく、最大という条件、単位、対象の部品が訳文にも残っているかを確認します。
単位を換算する必要がなければ、そのまま保持する条件を設定します。換算が必要な場合は、計算方法と丸め方を別に定め、翻訳モデルの出力だけで確定しません。図表番号や「前の手順を完了してから」といった参照関係も確認対象です。
合格条件を文章の読みやすさと分ける
評価では、承認済み用語の一致、数値・単位の保持、段落の欠落、操作順の変化、否定や条件の取り違えを分けて数えます。自然さだけを評価すると、重要な誤りが見落とされるためです。
通常の文章に加え、表、箇条書き、略語、原文が不鮮明な例を用意します。分からない箇所をもっともらしく補うのではなく、保留として確認者へ渡せるかも試します。調整用と評価用の資料は分け、未使用の章でも確認します。
重要な警告文や安全に関わる操作は、専門知識と言語能力を持つ確認者が最終判断します。重大な誤訳を含む出力を自動公開しないこと、保留箇所を残したまま完了扱いにしないことを、開始前に合意してください。
費用は翻訳量と確認工程で見積もる
見積りでは、文字抽出、用語集整理、翻訳処理、対訳画面、数値確認、評価資料づくりを分けます。対象言語や製品が増えると、辞書と評価の範囲も増えます。画像内の文字や複雑な表を扱うかも明示します。
AiPHAのPoC開発・検証は20万円からで、対象業務と開発範囲に応じた見積りです。AIサービス利用料などの別途費用は事前に案内します。LPの「10日で納品」という表記についても、資料準備や確認担当者の予定を含む進め方は相談時に確認します。継続保守や追加開発は別途相談です。
運用費にはAI利用料のほか、用語集の更新、原文改訂時の差分確認、専門家のレビュー時間を含めます。下書きが速くなっても、照合や修正が増えるなら効果は限定的です。従来手順と同じ資料で、確認完了までの時間を比較します。
導入を急がないほうがよい条件
原文の版が定まらない、正しい訳を判断できる人がいない、資料の利用権限が確認できない場合は、先に準備を整えます。安全上重要な文書を無人で公開したいという要件には、この翻訳補助PoCは適しません。
相談時は、対象言語、章の種類、資料量、現在の確認手順を整理してください。原本を送る前に、共有する資料と取り扱い条件を確認できます。
