社長や上司から「AIを導入してほしい」と言われることがあります。専任のAI担当者がいない会社では、何から手をつければよいか分かりにくいものです。

社内AI導入は、ツールを選ぶ前に対象業務を1つ決めることから始まります。総務や情シスの兼務担当者でも、選定と確認に役割を絞れば導入を進められます。

社内AI導入は何から始めればいいか

社内AI導入の最初の一歩は、ツールを選ぶことではなく、AI化する業務を1つ選ぶことです。ツールを先に決めても、当てはめる業務が決まっていなければ使われません。

候補になる業務は、日常的にくり返している作業の中から選ぶと的が絞りやすくなります。見積書の作成や日報のとりまとめなど、毎日か毎週発生する作業が対象になります。

AI化に向く業務の条件

AI化に向く業務は、次の4つの条件に当てはまるかで見分けられます。

  • 毎日・毎週くり返し発生している作業
  • 入力・照合・下書き・検索など、手順を言葉で説明できる作業
  • 過去の見積書や対応履歴など、判断のもとになる記録が残っている作業
  • 最終確認は人が行い、その手前の作業をAIに任せられる業務

この中でも、過去の記録が残っているかどうかは特に重要です。記録が無ければ、AIの出力が正しいか確かめる基準を作れません。社内データをどこまで整えれば使えるかは、社内データを生成AIで使う準備は1業務だけでよい記事で説明しています。

先に手をつけない方がよい業務の見分け方

先に手をつけない方がよい業務は、判断の根拠になる記録が残っていない業務です。その基準が無いまま着手すると、誤りに気づけないまま進んでしまいます。最終確認の工程が無い業務も同様で、誰も誤りに気づけません。

契約や規制で外部への情報送信が制限されている業務も、確認が終わるまで着手を待ちます。確認すべき範囲は「自社のポリシー」「クライアントとの契約条件」「業界や国が定める規制」の3つです。この3つをすべて確認してから着手します(出典:tdc.co.jp)。

先に外す業務の3条件
  • 判断の記録が残っていない業務
  • 最終確認の工程が無い業務
  • 外部送信が契約・規制で制限された業務

失敗しないための導入ステップと、それぞれにかかる期間の目安

導入は、方針決定、環境とルール整備、試験導入、本展開の4段階で進めます。対象業務を先に固定すると、途中で方針がぶれません。

かかる期間は、対象業務の数と社内の意思決定の速さで変わります。目安を挙げると、当社のPoC開発では最初の相談を30分で行い、着手から10日で検証まで進みます。対象を1つの業務に絞るほど、期間は短くなります。詳しい進め方は、ChatGPTの社内導入を4つのステップで進める手順にもまとめています。

導入の4ステップ
  1. 対象業務を決め、方針を固める
  2. ツールと最低限のルールを整える
  3. 1つの業務で実データを検証する
  4. 成果が出た業務から本展開へ広げる

最初に対象業務を決め、活用の方針を固める

最初の工程では、候補業務を洗い出し、効果が見込める順に優先順位をつけます。くり返し頻度が高く記録が残っている業務から並べると選びやすくなります。ここで経営層と目的を1つに揃えておくと、次の工程での判断がぶれません。

ツールと最低限のルールを整える

この工程では、使うツールと、その権限を持つ担当者を先に決めます。ルール整備を後回しにすると、入力してよい情報の範囲が曖昧なまま業務が進みます。最低限のルールは、試験導入に入る前のこの段階で決めておきます。

小さく試して実際のデータで検証する

次の工程では、選んだ1つの業務だけを対象に、実際のデータを使って動かします。複数業務を同時に検証すると、うまく動かない原因が分かりにくくなります。想定通りに動かない部分はここで洗い出し、範囲を広げる前に直します。

当社のPoC開発を例にすると、10日間をヒアリングとデータ受領(DAY1〜2)、開発(DAY3〜7)、実データでの検証・調整(DAY8〜9)、報告・納品(DAY10)に分けて進めます。自社で試すときも、期間を区切って途中経過を確認すると、次の判断がしやすくなります。

効果を確認できたら本格運用へ広げる

検証で成果が確認できた業務から、先に本展開に進めます。複数業務を一気に広げず、1つの業務が回り始めたことを確認してから、次の業務の選定に取りかかります。

専任担当者がいなくても導入を回す体制

専任のAI担当者を新設しなくても、総務や情シスの兼務担当者が窓口になれば、社内AI導入は回せます。必要なのは専門知識より、業務を理解している人が選定と確認を担うことです。

兼務担当者が抱え込む範囲を最初に決めておくと、途中で本業が回らなくなる事態を避けられます。役割を選定と確認に絞ることが、兼務のまま導入を続ける条件です。

兼務担当者が最初にやること

兼務担当者が最初にやることは、次の3つです。

  • 対象業務の選定と、関係する現場への声かけ
  • 開発や検証の作業は抱え込まず、要件と結果の確認に絞る
  • 進捗を確認する場を、週1回など短時間だけ社内に作る

開発や検証まで自分で抱えると、本業と並行できず途中で止まります。声かけと確認に役割を絞り、短い定例だけを社内に置く形にすると、兼務のままでも進められます。

どこまで自社で行い、どこから外部に頼むか

業務の選定と、AIに使わせるデータの提供は、社内の担当者が行います。現場の業務を知っているのは社内の人であり、対象業務を決める作業とデータを渡す作業は外部には任せられません。

開発・検証・調整は専門知識が要るため、外部に任せます。検証後に手順書が渡されれば、専任担当者がいなくても操作や情報更新を引き継げます。非エンジニアが対応できる範囲には限りがあります。ChatGPTでRAGを試すやり方、非エンジニアができる範囲はどこまでかにも整理しています。

自社と外部の役割分担

社内で行うこと

  • 業務選定とデータの提供
  • 進捗確認と結果の判断
  • 現場への声かけ

外部に任せること

  • 開発・検証・調整の実務
  • 手順書に沿った動作確認
  • AIエージェントの開発作業

導入前に決めておく社内ルールとリスク対策の最低限

最低限決めておくのは、使えるツールの範囲、入力してよい情報、出力を確認する担当者の3点です。決めずに使い始めると、情報漏洩や誤情報の混入に気づけません。

たとえば入力範囲を決めていなければ、顧客情報や個人情報が外部のAIサービスに送られているかどうか、誰も確認できません。この3点は使い始める前に決めます。

最低限盛り込むルールの項目

ルールに最低限盛り込む項目は、次の4つです。

  • 使ってよいツールと、使ってはいけないツールを分ける
  • 入力してよい情報と、顧客情報や個人情報など入力禁止の情報を分ける
  • AIの出力は必ず人が確認してから使う
  • 最終的に責任を持つ担当者を決める

この4項目は、業務や部署によって内容が変わっても、決める項目自体は共通します。最初に文書化しておくと、対象業務を追加するときも同じ形式で見直せます。

出力の誤りにどう備えるか

AIの回答は、事実と異なる内容を含むことがあります。重要な数字や固有名詞は、出力だけで判断せず、元データと照合してから使います。

照合を誰がいつ行うかを、ルールとしてあらかじめ決めておきます。担当者を決めずに運用すると、確認が抜けたまま出力がそのまま使われる状況が起きます。

注意

AIの出力を検証なしにそのまま業務に使うと、誤った数字や固有名詞が社外にそのまま出てしまう場合があります。

ルールを見直すタイミング

ルールは、運用してみて使いにくい点が出たタイミングで見直します。最初に決めたルールが、実際の業務の流れに合わないことは珍しくありません。

対象業務を追加するたびに、その業務に合わせた見直しの機会も作ります。業務ごとに扱う情報の種類が変わるため、追加のたびに短く見直す形にすると、ルールが運用から離れずに済みます。

貴社の課題をAIで1つずつ解決いたします。

1つの業務にしぼってAIエージェントを作るPoC開発を是非ご検討ください。開発・検証20万円〜。話がまとまっていなくても、お気軽に相談してください。

専任担当者がいない会社でも通用する、小さく始める進め方

大がかりなシステム導入をしなくても、1つの業務から試す方法があります。対象業務を1つに絞り、実際のデータで動かして確認します。

実際に想定される活用の例を3つ挙げると、自社に当てはめやすくなります。案件ごとの利益の見える化、判断基準の文書化、受注処理の自動化という3つが想定例です。

想定される活用例

想定される活用例は、次の3つです。いずれも想定例で、導入した実績ではありません。

  • 見積書・請求書・日報を取り込み、案件ごとの利益を一覧化し、粗利率が低い案件に印をつける
  • 技術者の判断基準をヒアリングで文書化し、問い合わせごとに受注可否の判定案と根拠を出す
  • 注文書を読み取り商品マスターと照合して受注一覧に自動入力し、判断がつかない明細だけ人に回す

いずれも、対象を1つの業務に絞って動かす例です。実際の精度は、自社のデータで検証してから判断します。

通常のシステム開発とPoC開発の違い

通常のシステム開発とPoC開発では、対象範囲・期間・費用が異なります。通常の開発は複数業務をまとめて要件定義し、期間は数か月〜1年、費用は数百万円からです。

PoC開発は対象を1つの業務に絞り、20万円〜、着手から10日で結果が出ます。費用の内訳は、AIエージェント開発の費用と見積もりの内訳、PoCから始める場合の金額と期間で説明しています。

項目 通常の開発 PoC開発
対象範囲 複数の業務をまとめて要件定義 1つの業務に絞って開発
期間 数か月〜1年 着手から10日
費用 数百万円〜 開発・検証20万円〜
進め方 導入後に業務体制の変更や社員教育が必要 対象業務と結果だけ決めて始め、即時に業務へ落とし込める

検証したAIエージェントは、そのまま業務で使い続けられる

PoCで作ったAIエージェントは作り直さず、検証後もそのまま業務で使い続けられます。1つの業務が解決したら、次の業務へ順に広げていく考え方で、本格導入への追加提案を前提にした作り方ではありません。効果は、確認の往復回数や担当者以外でも対応できた件数で測ります。

この記事で使った材料

業務を選ぶ条件や料金、進め方は、株式会社AiPHAが公開しているPoC開発サービスの内容をもとにしています。契約・規制で確認すべき範囲は、他サイトの記事(出典:tdc.co.jp)を参照しました。

よくある質問

ここでは、社内AI導入でよく検索される質問に、要点だけ答えます。

社内AIの導入費用はいくらですか?

当社のPoC開発は、**開発・検証20万円〜**です。対象業務や開発範囲によって見積もりが変わるため、正確な金額は業務の内容を聞いたうえで提示します。

生成AIを社内で導入するにはどうすればいいですか?

対象業務を1つ決め、方針決定・ルール整備・試験導入・本展開の順に進めます。1つの業務で運用が回り始めてから、次の業務の選定に進みます。

AI導入コンサルとは何ですか?

業務のヒアリングから開発、検証、手順書の作成までを一括で行う支援を指すことが多いです。手順書があれば、専任担当者がいなくても運用を引き継げます。

中小企業向けのAI導入事例はありますか?

見積の利益管理や受注処理の自動化など、1つの業務に絞った想定例が参考になります。いずれも導入実績ではなく、進め方のイメージとして紹介する例です。

まとめ

  • 導入は業務を1つ選ぶことから始まり、方針決定・ルール整備・試験導入・本展開の順で進む
  • 専任担当者がいなくても、選定と確認に役割を絞れば兼務のまま回せる
  • ルールは使えるツール・入力できる情報・確認者の3点を先に決めておく
  • 小さく試す方法として、20万円〜・10日のPoC開発という選択肢もある

まずは、いま手作業で時間がかかっている業務を1つ、書き出してみてください。どの作業に時間がかかっているか、AIに任せられそうな手順はどこか、入力してよい情報といけない情報の線引きはどこか。この3つを書き出しておくと、社内で話すときの材料になります。

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